episode10


パンクハザードの騒動もひと段落し、
ハート海賊団の仲間達も、無事、ローの元に集結した。

「船長〜〜〜!」
口ぐちに、喜ぶハート海賊団。
相変わらず、口数は少ないが、心なしかローの目から
険しさがなくなった。



「おぃ、これで終わりだと思ったら、大間違いだぞ。」
咥え煙草に、マントをなびかせて近づいてくる人影。

「・・・・」
まだ、厄介なのが残ってたか。

このまま、逃げてしまった方がいいな。
と判断するが、涙を浮かべ突っかかって来た女海兵を
思い出す。

目の前の女と、とても同じだとは思えない。

チッと舌うちをしながら、ローはたしぎ姿のスモーカーに近づいた。

「ったく、すこしは考えろ。お前の身体じゃねぇだろ。」

たしぎの口から葉巻を取って捨てると、腕をすっと上げる。


「ルーム」

指をひねり、二人のハートを入れ替える。




とたんに、たしぎの顔から険しさが無くなる。
後ろの方で、元に戻ったスモーカーが身体を確かめるように
触っている様子が見える。

「あっ、戻った!」
両手を頬にあて、確かめるように触る。
そして、自分の胸元が、
想像以上に開いているのを目の当たりにして、
顔を赤らめる。

あたふたと、ボタンを留めながら、喋り出す。

「え、えっと、スモーカーさんの心臓のことは礼を言います。
 でも、七武海といえども、この次は、許しませんよ。」

「ふっ、相変わらず口の減らない女だな。少し黙ったらどうだ。」
すっとローの手が伸びて、たしぎの顎に手をかけた。
そのまま上を向かせると、ローの親指がたしぎの唇の輪郭を撫でていく。

「この口、誰かと交換してやろうか?」
ローの舌が、チロリと動く。

「!!!!」

驚いて目を見開いたまま、固まってしまうたしぎ。



と、いきなりたしぎとローの間に入る人影があった。
「てめぇ、何してんだぁ?!」
ローの胸ぐらを掴んだ手は、ゾロのものだった。

「なんだ、麦わら屋んとこの・・・」
動じることもなく、ゾロの顔を見る。

「何でお前が出てくんだよ。」

ギリッと奥歯を噛み締め睨みつけるゾロを、
軽くいなして距離を置く。

「お前に恨まれる筋合いはないぞ。」

「うるせぇ、女に手かけるような奴は気に入らねぇんだよ!」

ゾロの様子に、ローは、ああ、解ったとばかりに
目を細める。


「ほんの、出来心だ。悪く思うなよ。」
くくっと笑うと軽やかに姿を消した。


怒りが収まらない様子でゾロが振り返ると
顔を赤くしたたしぎが、まだ、ボケっと突っ立っていた。

「何してんだよ!お前は。」


「なっ、何ですか?いきなり!」

「隙だらけなんだよ!まったく!」

「なっ、何でそんなこと、ロロノアに言われなきゃいけないんですかっ!!!」

ギャーギャーと言い合う二人を少し離れた所から
スモーカーが眺めている。
新しい煙草に火を点け、ふぅーっと大きく煙を吐いた。

「また、ややこしい事になりやがったな。」

グルッと首を廻すと部下たちに声をかける。
「さぁ、出航の準備だ。」

「あの、大佐ちゃんは?」

「いいから、少しほっとけ!」


スモーカーはゆっくりと歩きだした。



〈終わり〉



まあ、一時協定というか、海軍・麦わら・ロー。 今回は、お互い手出し無用ということで。
ローの方が一枚上手でしょうか。すっかりゾロが、ヘタレです。