episode13



「うぅ・・・」

頭が割れるように痛い。全身が軋むように悲鳴をあげた。

目を開けると、そこは微かに暗い倉庫のような所だった。

「大丈夫かい?かわいこちゃん。」
覗き込む顔は、金髪の男。

・・・麦わらの一味、黒足のサンジ・・・

なぜ、ここに・・・?


たしぎの脳裏に、蘇るG-5のみんなが倒れる光景。
そして、ヴェルゴの硬い拳。

「み、みんなは!?」
身体を起こそうとして、激痛に顔をしかめる。

「うっ・・・!」

「ダメだよ、急に動いちゃ。おとなしくしてて。」
やわらかい口調だが、身体をしっかり支えられ、床に横たえられる。

「今、うちの船医が来るから、もうちょっと辛抱して。
 え〜〜っと、たしぎちゃん、でいいのかな?」

目の前の男の顔を見つめる。

「ほら、G−5のヤローどもが呼んでたでしょ。」
ニコッと笑う顔が、今までの事が夢じゃないかと思わせるくらい
優しげだ。

「・・・たしぎです。助けてくれてありがとう。
 それで、G−5のみんなは? みんなは何処にいるんですか?」

男は、煙草をくわえると、少し黙る。
火もつけずに、また持ち直すと、ゆっくりと告げる。

「あなたを助けるだけで、精一杯だった。
 運よく逃げ延びた海兵が何人かはいるかもしれねぇ。
 でも、今は、分からない。」

サンジの言葉を飲み込むのに、随分時間がかかった。


じっと見つめ返したサンジの表情から、
それが嘘ではないことを知る。

不思議と涙は出なかった。
ただ、何をどう考えればいいのか、全く分からなかった。
重い鉛を飲み込んだように、胸が詰まる。



「サンジ!」
男の名を呼ぶ声に、顔をあげると
帽子を被ったトナカイがこちらにやってくる。

「遅くなってゴメン。どうだ?容態は。」
船医とは、このトナカイの事なんだろうか。
そう、手配書にはトニートニー・チョッパーと。
たしぎは思い出した。

サンジは、黙ってチョッパーに場所を譲る。

たしぎは、されるがままにチョッパーの手当てを受けた。

ようやく、この場所の気配を感じる。
多数の人の気配、時折聞こえる、声。
・・・子供?

思わず身体を起こした。

「おいっ、無理するな。」
制止する船医に、噛みつくように確認する。

「この、子供たちは?!」

「あぁ、この研究棟に捕えられていた子供たちだ。
 やっと連れ出して、解毒剤を投与したところなんだ。」

「解毒剤?」

「あぁ、シーザーの野郎、子供たちを薬漬けにしやがって、
 ここから、逃げられないようにしてたんだ。」

ひどい。
たしぎは、唇を噛んだ。

「アバラも二、三本いったかもしれねぇ。
 しっかり、包帯巻いといたけど、無理は禁物だ。
 あと、これで冷やしといたほうがいい。」

トナカイの船医は、冷たい氷をくるんだタオルを差し出した。

「・・・」

「顔に。」

言われて気づく。右目が開かないほど腫れている頬の痛みに。

「ありがとう。」
目を瞑ったまま、タオルに顔を埋める。

なぜ、海賊が・・・
子供たちを助ける。

私が・・・海軍が・・・助けるべき子供たち。
その海軍が、子供たちの誘拐に、手を貸してたとは・・・

ヴェルゴの顔が浮かぶ。

スモーカーの顔が浮かぶ。

「あのバカ共を逃がせ!!!ガキ達もな」

私は、何一つ・・・


顔をあげると、まだ側にいたサンジに尋ねる。

「あの・・・海軍のスモーカー中将の居所は?」

「あぁ、あいつなら、ウチの船長と一緒だろ。
 さっき、シーザーを追ってった。」

「ヴェルゴは・・・」

あの時、一体・・・何が起きたんだろう。
曖昧な記憶に、胸が痛くなる。
思い出したくない程に。



ドゴォ〜〜〜〜ンッ!!!


突然、大きな音と共に、部屋の扉が吹き飛んだ。
煙と熱をはらんだ風が、吹き抜けた。



〈続〉







G-5の皆は実は避難して助かってた。のつもりでした〜。(^^ゞ