episode2


「やっと、現れたな。」
指を鳴らしながら、軍艦の甲板に立つスモーカー。

「久しぶりだな、ケムリン!」
サニー号から屈託なく、ルフィが声をかける。

「てめぇ、俺らがただ黙って待ちかまえてたなんて思うなよ。
 お前らは、ここで終わりだっ!」

「いきなり、ケムリンが相手なのか?!参ったな、はは。
 でも、オレ達は止まる気はないんだよっ!」

嬉しそうに笑うルフィに、スモーカーは思い切り顔をしかめた。


*****


後方の甲板の一画が急に騒がしくなった。

サニー号を飛び出してきたゾロが、甲板に降り立ったのだ。
「オレが相手だ。命の惜しくねぇ奴はかかって来い!」

1億超えの賞金首の啖呵に、さすがのG-5の荒くれどもも
飛びかかれずにいた。

「やっと、会えましたね。」
すっと、前に出てきたのは、正義のマントを羽織ったたしぎだった。

時雨を抜いた。

ゾロは、じっとその姿を見つめたまま、何も言わない。

「へへ、ロロノア・ゾロでも、我らがマドンナたしぎ大佐の前じゃあ、
 見とれて声も出ねぇのか。」
「この可憐さに、おののいてやがる。」
「たしぎ大佐に、傷一つ付けてみろ、ただじゃおかねぇぞ。」

「あ、あなたたち、いい加減にしなさい!」
顔を赤らめながら、叱責するたしぎに、ゾロの眉が微かに動いた。

「ロロノア、覚悟です。」
ゾロに向き直り、真剣な眼差しで構える。

踏み込んでくるたしぎを、ゾロがふわりとかわす。
一瞬、ゾロの腕が動いたように見えた。

剛で知られるゾロの柔かい動きに、一同、気勢を削がれる。
たしぎの目の前から、ゾロが消えた。

ふと首筋に風を感じて、たしぎが振り返る。
パサッ。
髪が頬にかかる。
たしぎの視線の先には、結ったままの髪の束が、落ちていた。





ゾロが背後に立ち、顎に手をやりながら、自分を見ている。
「ふむ。」

刀を肩に預け、一気に破顔した。
「オレは、こっちの方が、いい。」

あまりの衝撃に、口を開けたまま、
ゾロの顔をただ見つめるたしぎ。
次第に、顔が真っ赤に変わる。

「なっ、なに、するんですかっ!!!」


「あ〜〜〜〜〜っ!!!」
海兵達が挙げる叫び声に、ゾロが、顔をしかめ、頭を掻く。
「ったく、チヤホヤされて、浮かれてんじゃねぇぞ。」

「ロッ、ロロノアッ!!!」
今度は怒りで、顔が赤くなる。

「追えるもんなら、追って来い!」
ニヤリと笑うと、何事もなかったように、サニー号へと戻って行った。



****

「たしぎぃ!」
スモーカーの声に、我に帰る。

「くそっ、逃げ足の早い奴らだ。
 すぐに、港に戻り、補給を済ませろ。後を追う。」

「はいっ。」

「あいつら、この新世界で、何をしでかすか、しっかり見張っとくぞ!
 いいな。」

「はいっ!」

「お前も、ようやく会えたな。」
ちらっとたしぎの髪に目をやると、気の毒そうに呟く。

「ゆ、許しませんっ!ロロノア・ゾロ!」
拳を握りしめるたしぎの耳には、その声は入らなかった。



〈完〉



ほんの、出来心です(^^ゞ
短い髪も捨てがたい!
そりゃ、ゾロにはこう言って欲しかったんですけどね。
「ったく、うるせ〜な。コイツは、オレんだっ!
 手出したら、承知しねぇぞっ!!!」