「やっと、現れたな。」
指を鳴らしながら、軍艦の甲板に立つスモーカー。
「久しぶりだな、ケムリン!」
サニー号から屈託なく、ルフィが声をかける。
「てめぇ、俺らがただ黙って待ちかまえてたなんて思うなよ。
お前らは、ここで終わりだっ!」
「いきなり、ケムリンが相手なのか?!参ったな、はは。
でも、オレ達は止まる気はないんだよっ!」
嬉しそうに笑うルフィに、スモーカーは思い切り顔をしかめた。
*****
後方の甲板の一画が急に騒がしくなった。
サニー号を飛び出してきたゾロが、甲板に降り立ったのだ。
「オレが相手だ。命の惜しくねぇ奴はかかって来い!」
1億超えの賞金首の啖呵に、さすがのG-5の荒くれどもも
飛びかかれずにいた。
「やっと、会えましたね。」
すっと、前に出てきたのは、正義のマントを羽織ったたしぎだった。
時雨を抜いた。
ゾロは、じっとその姿を見つめたまま、何も言わない。
「へへ、ロロノア・ゾロでも、我らがマドンナたしぎ大佐の前じゃあ、
見とれて声も出ねぇのか。」
「この可憐さに、おののいてやがる。」
「たしぎ大佐に、傷一つ付けてみろ、ただじゃおかねぇぞ。」
「あ、あなたたち、いい加減にしなさい!」
顔を赤らめながら、叱責するたしぎに、ゾロの眉が微かに動いた。
「ロロノア、覚悟です。」
ゾロに向き直り、真剣な眼差しで構える。
踏み込んでくるたしぎを、ゾロがふわりとかわす。
一瞬、ゾロの腕が動いたように見えた。
剛で知られるゾロの柔かい動きに、一同、気勢を削がれる。
たしぎの目の前から、ゾロが消えた。
ふと首筋に風を感じて、たしぎが振り返る。
パサッ。
髪が頬にかかる。
たしぎの視線の先には、結ったままの髪の束が、落ちていた。
!
ゾロが背後に立ち、顎に手をやりながら、自分を見ている。
「ふむ。」
刀を肩に預け、一気に破顔した。
「オレは、こっちの方が、いい。」
あまりの衝撃に、口を開けたまま、
ゾロの顔をただ見つめるたしぎ。
次第に、顔が真っ赤に変わる。
「なっ、なに、するんですかっ!!!」
「あ〜〜〜〜〜っ!!!」
海兵達が挙げる叫び声に、ゾロが、顔をしかめ、頭を掻く。
「ったく、チヤホヤされて、浮かれてんじゃねぇぞ。」
「ロッ、ロロノアッ!!!」
今度は怒りで、顔が赤くなる。
「追えるもんなら、追って来い!」
ニヤリと笑うと、何事もなかったように、サニー号へと戻って行った。
****
「たしぎぃ!」
スモーカーの声に、我に帰る。
「くそっ、逃げ足の早い奴らだ。
すぐに、港に戻り、補給を済ませろ。後を追う。」
「はいっ。」
「あいつら、この新世界で、何をしでかすか、しっかり見張っとくぞ!
いいな。」
「はいっ!」
「お前も、ようやく会えたな。」
ちらっとたしぎの髪に目をやると、気の毒そうに呟く。
「ゆ、許しませんっ!ロロノア・ゾロ!」
拳を握りしめるたしぎの耳には、その声は入らなかった。
〈完〉
ほんの、出来心です(^^ゞ
短い髪も捨てがたい!
そりゃ、ゾロにはこう言って欲しかったんですけどね。
「ったく、うるせ〜な。コイツは、オレんだっ!
手出したら、承知しねぇぞっ!!!」