「私に、私に剣を教えてください。」
目の前で、土下座する女海兵を
ミホークは好奇の目で、見つめていた。
ここ、新世界へと拠点を移した海軍本部に
鷹の目ミホークは、来ていた。
レヴェリー(世界会議)開催にむけての
七部海への要請という名の、伺いを聞きに。
海軍と世界政府の動きを知るいい機会でもある。
更には、黒ひげティーチの動向も、知っておきたかった。
それなりの情報を得て、帰ろうとした矢先だった。
滞在先のホテルの部屋をノックする者がいた。
椅子に座ったまま、女を見下ろす。
「私に、私に、剣を教えてください。」
床に額を擦り付けるように頭を下げたまま、女は繰り返す。
「どういう了見だ。答えよ。」
「最強を目指すと言うのか。」
女の身で。と言われたようで、たしぎは身を固くした。
ゆっくりと顔をあげた。
張り詰めたように、ミホークを見つめるまなざしは真剣だった。
「見届けたい剣士がいます。強くならねば、追うことも叶いません。」
ほう。
ミホークの眉が動いた。
「たかが、一海兵。お前に何ができると言うのか。」
唇をぐっと噛む。
「それでも、追うと自分に誓いました。」
「その剣士の名は。」
「・・・ロロノア・ゾロ。」
ふはははは。面白い。
お前が、あの若造を追うのか。
この新世界で、生き抜いているのだな。
その目的の為に。
「ついこの前、おまえと似たような目をした若造がいたな。
懐かしい。」
「任務を離れてまで、稽古は出来まい。」
海軍の任務と、剣の強さ、どちらかを選べというのか。
たしぎは、答えられなかった。
「簡単に捕えられるなどと、思ってはおりません。しかし、剣士として
・・・この目で、見届けたいのです。」
鷹の目には、この女がロロノア・ゾロと一緒に居る姿が浮かんだ。
剣を交えているのか、背中合わせに共に闘っているのかは
定かでなかった。
この二人、交わる運命なのか。
「まぁ良い。海軍でなけれれば、追うことも叶わぬだろう。
居場所を教えろ。気が向いたら、立ち寄ってやろう。」
ぱあっとたしぎの顔が輝く。
「あ、ありがとうございます。」
「ただ、その前に、自分を否定する者に、強さはないぞ。
まずは、その弱さを受け入れ、認めよ。」
「女とて、強くなれるのだ。」
!
思いがけない言葉に、たしぎの心は踊った。
ロロノアと対の剣を授けよう。
面白いことになるかもしれぬ。
たしぎは、ロロノア・ゾロがこの鷹の目に
剣を教わっていることは知る由もなかった。
一途の希望を胸に、ロロノアに追いついてみせると
心に誓うたしぎであった。
〈完〉
”砲弾流し”の優しい剣は、ミホーク仕込みでしょうか?
だったらいいな〜〜!
二人、知らないまま、同じ師匠に剣を請う。むふふ