「あれ、おまえ!」
ルフィ達が、ローの前にたどり着いた。
ちっ、麦わら屋か、また面倒くせぇ奴が現れた。
ルフィは、ローの側に倒れているスモーカーを見つける。
「あん時は、世話になったな。」
頭を下げるルフィ。
「ところで、このおっさん、助けてやってくんねぇか?
知り合いなんだ。」
「こいつは海軍だ。助ける義理はない。」
「うん、でも、まぁ。お前、医者だろ。」
バラバラとG-5の海兵達が走ってくる。
たしぎは、スモーカーの姿をみつけ、愕然とする。
「スモーカーさんっ!!!」
駆け寄ると、倒れているスモーカーを抱き起こす。
「し、心臓が・・・」
息を呑む。
顔を上げたたしぎは、ローを睨みつける。
「何をした!ロー!」
「なんだ、戻って来たのか。また、斬られたいのか?」
ニヤリと笑うロー。
また? ゾロの眉がピクンと動く。
「大佐ちゃん、ダメっす!また、まっぷたつになるってばっ!」
「そうだよ、俺らかなう相手じゃないのは、解ったじゃないすか!」
「離しなさい!スモーカーさんを、助けるんですっ!!!!」
取り乱すたしぎを、G-5の海兵達が、押さえつける。
たしぎの手に握られた折れた時雨が、むなしく空を斬る。
海軍の様子を見ていたルフィは、もう一度、
ローに頼む。
「なぁ、ケムリン、案外、いい奴なんだ。
元に戻してやってくれ。」
「呆れた海賊だな。あいつを元に戻せば、またややこしくなるだけだ。」
二人のやりとりを聞いていたゾロが、口を開く。
「おい、ルフィ。オレにやらせろ。こっちが下手に出てりゃ、いい気になりやがって。」
「ゾロ。」
「ここは、オレにまかせて、お前らは、ナミ達を探せ。」
「わかった。なぁ、ロー、早いとこ戻してくれよな!」
あくまでも、頼むルフィ。
「大丈夫か?ゾロ!」不穏な雰囲気をウソップが心配する。
「あぁ、海軍は気に入らねぇが、女に手かけるような奴は
もっと気に入らねぇ。」
ゾロが鬼鉄に手を掛けた。
******
くっ、こいつは、一筋縄じゃいかなそうだな。
ゾロとの張り詰めた空気の中、ローは考えていた。
ここで足止め喰らってる場合じゃないな。
これ以上、おおごとになれば、もっと面倒だ。
中の麦わら屋も、何をしでかすか・・・
「ほらよ。スモーカーの心臓だ。」
ゾロに向かって、放り投げる。
くっ。落とさないように、受け止める。
その一瞬の隙をつき、ローは建物へと姿を消した。
あの野郎!
後を追おうとしたが、ゾロは足を止める。
こっちが先だな。
心臓を抱え、スモーカーを抱きかかえているたしぎの元へ
歩み寄る。
ゾロとローの対峙を見守っていたたしぎは、何も言えずにゾロを見上げる。
「ほらっ、大佐ちゃん、スモやんの心臓、戻してやんな。」
部下達に促されて、たしぎはスモーカーの心臓を元に戻す。
「うっ・・・」
スモーカーがうめき声を上げ、動き出すと、
海兵達に安堵の空気が広がった。
「スモやん、よかった〜〜〜。」
「どうなることかと、思ったぜ、中将!」
その様子を見届けると、ゾロはルフィ達を追って
建物へと走りだそうとした。
「あ、あのっ!」
呼び止められ、立ち止まる。
ゾロがゆっくりと振り返ると、スモーカーを取り囲む一団から
離れて、たしぎが立っていた。
「あ、ありがとうございました。」
「別に、お前の為じゃねぇ。
礼を言われるような事はしてねぇぞ。」
「ひでぇ顔だ。」
ゾロがニヤリと笑う。
たしぎは、何も話せずに、見つめるだけで精一杯だった。
「髪、伸びたな・・・」
ゾロも、言葉が続かない。
「じゃあな。」
ゾロは建物へと走り出した。
〈完〉
やられたスモさんを目の当たりにして、取り乱すたしぎ。
我を忘れてローに向かっていく姿を思い浮かべて。