「おまえのキスはくすぐってぇ。」
寝転がっていたゾロが、ガバッと起き上がった。
グランドライン、とある島。
海を見下ろす、小高い丘に二つの人影がある。
小春日和のうららかな午後、いつの間にかゾロは、隣でいびきをかきはじめた。
気持ち良さそうに寝ているゾロの顔を見つめているうちに、
たしぎは、ちょっかいを出したくなった。
たしぎの唇がそっと頬に触れる。
見た目以上に、ゾロはきめ細やかな肌をしている。
胸も、つるっとしていて、傷跡以外はなめらかだ。
かすかな産毛を、唇で感じながら、おでこに、まぶたに、頬に、鼻に、あごにと、
すべるように唇を滑らせる。
ゾロのいびきがやんだかと思ったら、急に起き上がって、ああ言われた。
くすぐったいと言われ、顔が赤くなる。
「な、なんですかっ!ひとが、せっかく。」
「せっかく?」
眉間にしわを寄せて、目を細める。
「せ、せっかく、気持ちよくしてあげようと、してたのに。」
「なんだ、それ。」
ぶっとゾロが吹きだした。
「だって、・・・キスされると気持ちよくなりません?」
「どうやって?」
「今みたいに。」
「誰に?」
「ロ、ロロノアに。」
「オレは、そんなまどろっこしいキスなんかしねえよ。」
そして、悪戯っ子のように、にやっと笑うと、
「もっと、情熱的なのがいい・・・」
と、再び頭に手をやって寝転がり、目をつぶる。
「そ、そんな。」
たしぎは戸惑いながらも、再び顔を近づける。
さっきよりも、少し、激しく。
半開きの唇を舌で舐めあげると、下唇も丁寧にしゃぶる。
舌を少しずつ、口の中に差し入れる。
歯を舐め、歯の裏を舐め、奥にあるロロノアの舌にたどり着く。
どうにか、絡めようとするがゾロの舌はピクリとも反応しない。
たしぎは、だんだん、やっきになっていく。
少し大きく口を開けて、奥まで届くように舌を割りいれようとする。
前かがみになっていた身体を支えられなくなって、ゾロの頭の脇に両手をついて、
覆いかぶさるように口づけを続ける。
「ん・・・」
思わず声がもれる。
ギュッと、つぶっていた目を開けると、ロロのアがこっちを見ている。
驚いて、顔を離そうとしたら、ゾロが腕を掴んで引っ張る。
上に倒れこむように抱きついた。
「見てるなんて、ずるいです。」
ゾロは、満足そうに笑いながら、答える。
「ん、どうやって食べようか考えていた。」
まったく、おちおち寝てもいらんねぇな。
少し、日が陰った海辺も二人には火照った身体に心地よかった。