いいから黙って

何気に大人仕様ですので、嫌いな方は BACK で戻ってね。
ほんと?いいの?笑って許してくださるのなら・・・



















たしぎは、街はずれの酒場へと向かっていた。
麦わらの一味の目撃情報を得たからだ。
きっと、酒場に行けばゾロに会えるだろうと。

出掛けに、部下から声を掛けられた。
「たしぎ少尉、今日はどちらへ?」
「はい、ちょっと街を散策しようかな、と・・・」
曖昧な返事で誤魔化して、船を降りた。
麦わらの一味を捜索しに、と言えばいいものを、
何も隠すような事でもないのに。

今日は非番だ。
だから、どうという訳ではないが、
ロロノアと向きあったら、刀を抜ける自身がなかった。

「勝負です。」
「あなたを捕まえます。」

幾度となく言った言葉はいつも一笑に付される。
身体を重ねる関係になったのも、
自ら望んだ事だから、後悔はしていない。

しかし、全てを許した訳ではない。
そう思っているのは私だけかもしれない。

そんな事を考えながら、酒場の入口に立つ。
バタンと扉を開けると、店の奥に、見慣れた緑色の髪。
一直線に、ゾロのいるテーブルに近づく。
テーブルには酒場の女達がまわりに群がっている。
1億2000万ベリーの賞金首だ。手配書も出回っている。
ゾロは認めなくとも、近づいてくる女は絶え間ないのだろう。

近づいてくるたしぎを認めると、ゾロはゆっくりと杯を置く。

ゾロの前に立ったたしぎは、低く抑えた声で告げる。
「勝負です、おとなしく外に出なさい。」

ゾロの返事を待たずに、店の外に出た。
「お呼びが掛かったようだな。行ってくる。」

周りの女達は、一斉に反対の声を上げる。
「えぇ〜〜、行っちゃうのぉ。」
「あんなの無視しちゃって、此処に居てよ〜。」
しきりにシナを作って、引き止めようとする。
軽く笑いながらゾロは立ち上がる。
周りの男達が、口々に囃したてる。
「こんなところまで追っかけてくる女がいるんだ。たいした男だぜ。」
「モテる男は違うねぇ。1億超えの海賊は、威勢のいい女が好みなのかぁ。」

ゾロは、酒場の喧騒も気にかけず、店の外に出た。

たしぎは思った以上に自分が怒っている事に気付く。
酒場から離れたひらけた場所に来ると、時雨を抜く。
「今日こそは、あなたを倒します。」

すこし首を傾げて、腕を組みながらたしぎを見つめるゾロ。
「な、なんですか?さっさと抜いたらどうなんですか!」

「なに、怒ってんだ。」
「お、怒ってなんかいませんっ!」
指摘された恥ずかしさが、顔に出る。
「そんなんじゃ、稽古にすらならねぇ。」
たしぎは、ぐっと唇を噛む。
ロロノアの言うとおりだ。


強くなりたい。何よりもそれを望む。


でも、本当にロロノアを捕らえたいのか?
それとも、触れたいのか?

次々と逡巡する想いに、首を振って俯く。
自分がどうしたいのか、解らない。


そんなたしぎを黙って見ていたゾロは、
たしぎの手を取ると、黙って歩き出す。
「ちょ、ちょっと。何処行くんですか!」
ゾロは、抜き身の時雨を持っているというのに、
全く気にしていない。

ゾロが連れて行った所は、宿屋だった。
「非番なんだろ。」
有無を言わさず、部屋をとる。
「ちょ、ちょっと・・・私は、そんなつもりじゃ・・・」
一向に聞く気はないようだ。

それでも、たしぎは少しでもゾロと話したかった。
後に続いて、部屋に入った。

「あ、あの・・・私、どうしていいか、もう・・・」
何から話せばいいのか、迷いながらも口を開く。
吐き出してしまえば、少しは楽になるのだろうか。

ゾロは、部屋に鍵を掛け、刀を立てかけると、
立ったままのたしぎの目の前に歩み寄る。

すっと手を伸ばして、たしぎの髪に触れると、
何も言わずに、唇を重ねる。
「んっ・・・ロ、ロロノア・・・」
慌てて何か喋ろうとするたしぎをじっと見つめると
ゾロは静かに口を開く。
「いいから、黙って抱かれてろ。」








ヒドイ・・・
そんな言い方。



身体を強ばらせるたしぎに構いもせず、
ゾロは耳元にキスをする。
たしぎの全身にゾクッと電流が走る。

首筋から唇を這わせながら、たしぎのシャツのボタンを外していく。
シャツを脱がすのも途中で、キャミソールをたくしあげる。
露になった、乳房のその先端がヌルっと生温かい舌で舐められる。
「ひぁっ!」
思わず仰け反ると、ゾロが背中に手を廻し、ベッドに仰向けに倒される。
「い、やっ。やめっ。」
たしぎの腕に乗せられた節くれだった指はびくともせずに、
ゾロの舌だけが、身体をなぞっていく。

たしぎの腰の上に股がったゾロは、当たり前のようにたしぎのズボンを
脱がせて行く。足をバタバタさせたところで、全く動じない。

私がどんな想いで、あなたの元へ
来ていると思うの。
悔しい・・・

拳を握り、ゾロの胸板を跳ね返すようにどんどんと叩いた。
いつも、あなたは、そうやって余裕で笑っている。
悔しい。



********



いつも、眉間に皺寄せて、思いつめたような顔で
たしぎは、オレの前に現れる。

それでもいい。
もともと、お前が追わなければ、成り立たなかった関係だ。

いつしか、たしぎが現れるのを、心待ちにしている自分がいた。
でも、その顔を見ると、心がざわつく。
この関係は、どこへ行こうとしているのか。
天国か地獄か。破滅へと向かっているのだろうか。

もう二度とオレの前には現れないかもしれない、
そんな想いが、幾度となくよぎった。


たしぎの口から、思いまどう言葉は聞きたくなかった。


安心させるような言葉をオレは持っていないから。



******



遠慮のないゾロ自身がたしぎの中に入ってくる。
圧倒的な質量に、息をするのも忘れそうになる。
望もうと望まざると、あなたは、こうやって私をあなたで一杯にするんですね。
爪を立てようかと、力を込めた指先は、いつしか、ゾロの背中にしがみついている。

せめてもの、意思表示に首を振り、顔を背ける。
それを許さないゾロは、両手でたしぎの頬を包み込むと自分に向かせて
唇を求める。

このまま溺れてしまう自分が悔しくて、
目の前がぼやける。
もう、何も考えられない・・・
頭の中が、真っ白になってたしぎの中で白い光が弾け飛んだ。




ふと、目尻に温かいものが触れる。
瞑っていた目を開けると、ゾロの顔が近くにある。
伝って落ちた涙の雫を、舐め取っている。

泣いてたんだ・・・
気づかなかった。

ゾロの手は包込むように、優しかった。
柔らかい髪の毛が頬に触れる。
そのまま、たしぎの肩に顔を埋めるように
抱きしめると、掠れた声で呟く。

「・・・いいから、黙って抱いてくれ。」





ゾロのその拗ねたような口ぶりに、顔が緩んだ。

汗ばんだゾロの背中に手を廻す。
盛り上がった筋肉をなぞって、指先に力を込める。
ふっとゾロの躰から力が抜ける。



「やっと笑いやがった。」
上目づかいに、たしぎの顔を見上げる。

たしぎがゾロの額に口づけを落とす。

迷いも不安も口にすれば、囚われる。
確かなものは、この腕の中にある。



たしぎに覆いかぶさったまま、
再びゾロの手が身体を滑る。
ゆっくりと、その感触を確かめるように。
「・・・んっ・・・」

ゾロが触れた箇所が熱を持つ。
再会を待ちわびていた乾いた心に、ジワジワと染み渡る。
一度、達したたしぎの身体は、簡単に再び火が灯る。
ロロノア。
幾度でも、このまま名を呼んでいたい。
ぴたりと吸い付いた肌、このまま溶けて一つになれたらいいのに。

たしぎは、求めるように、ゾロの胸に口づけをする。
背中から伸ばした手で、耳に触れる。
くすぐったぞうに、首を傾げるゾロの頬を撫で、
指先で唇をなぞる。

ゾロの舌が、たしぎの指を絡めるように咥える。

中をまさぐるゾロの指先は、たしぎを再び、溢れさせ、疼かせる。
身体の芯から、溶け出していく。
「ロロノア。」


「たしぎ。」
名を呼ぶ毎に、自分の中から熱いものが込み上げる。
その瞳で、その指先で、オレを求めてくれ。
熱を帯びた唇が、半開きのまま、オレの名を呼ぶ。
漏れる吐息に心臓がギュッと握られらたように、激しく高鳴る。


「ロロノア、ロロノア。」
繰り返し名を呼ぶ。
もう、どうなったって構わない。
あなたしか見えないから。



ゾロの腕の中で、たしぎが仰け反り、硬直する。
「あ、あぁっ!」
堪えきれずに漏れた嬌声は、ゾロを煽る。
糸が切れたように脱力するたしぎの内部が、
ひくついて、ゾロを一気に押し上げる。
熱いたぎりを、たしぎの中に解放すると、その腕の中に 沈みこむ。
荒い息づかいと、心臓の鼓動だけが暗闇に響く。

交わす言葉はなくとも、ピタリと重なりあったままの身体が
静かに眠りに落ちる。




*******


月明かりを浴びて、ほんのりとたしぎの白い肌が浮き上がる。
悩みなどないような、あどけない顔で眠っている。



行けるとこまで、行くしかねぇな。

ゾロは、その無邪気な寝顔をみつめながら想う。



夜明けとともに、再びたしぎは帰っていくだろう。
そして、また、オレを追ってくるだろうか。

ゆっくりと首を振ると、たしぎを起こさぬように抱きしめる。
いま、この瞬間が全てだと噛み締めるように。



〈完〉


「いいから黙って抱かれてろ」
別カレというゲームで、言われたい台詞No.1だそうで、
そっから出来た話しです。
あ、いいように解釈しちゃいました。(^^ゞ