消せない想い



「いいのか?」

黙ってうなずいたのは、たしぎだった。

もうこれ以上、自分の心をだまし続けることは出来ない。


「・・・ごめんなさい・・・」
うつむくたしぎを、そのままにして、スモーカーは部屋を出る。

責める言葉もない。


ぬくもりだけ欲しかった。
それ以上に、優しかった。

このまま、あの人の胸で、眠ることができれば
どんなに安心だろう。

気づいてしまった
決して消えることのない想い。

忘れることなど出来なかった。

分かっていたのに、
何かにすがれば楽になれると・・・


今だけは、望みのない道でも構わないと決めた
自分を褒めてもいいのだろうか。

今なら、まだ引き返せるのか?
ふっと、顔を上げて、スモーカーが出て行ったドアを見る。



自分の迷いを笑う。



同じだった。

似たものどうしが、傷を舐めあっただけ。


ゴシッ。拳で瞼をぬぐう。

これで、よかったのだ。きっと。

無理やり笑顔を作る。

たとえ、二度と戻れないとしても。



〈完〉






わたしなりの決着。