目の前の背中を


「我が隊は、本日、G5への転属希望を出した。
 承認されれば、我々は新世界へでの任務となる。
 強制はしない。各自、よく考えて転属するかどうか決めるように。
 期限は一週間、希望を出せ。以上、解散。」

朝の交代の時間、隊員達に告げたのはスモーカーだった。
少しざわついた隊員達は、それぞれの持ち場へと散っていった。

「決められたんですね。」
艦長室へと戻ったスモーカーに、たしぎが淹れたてのコーヒーを運んでくる。

「どうぞ。」
スモーカーの机にカップを置いた。
「うむ。」


「彼らは、新世界に現れるでしょうか。
麦わらの一味は。」

「あんなことでくたばる奴らかよ。
お前だって、信じちゃいないだろう。」

胸の奥底に鈍い痛みが走る。

「そうですね・・・」
誰よりもそう願う。

「たしぎ、お前は、どうする?」

「決まってます。何処へでもついて行きます。」

当たり前です。

「そうか。」

「じゃあ、しっかり、ついてきな。迷うんじゃねえぞ、こっから先は。」

「はい。」

ずっとこの背中についてきた。いつも目の前にあった。
時には守り、時には引っ張ってくれた大きい背中。
あなたが進むというのなら、地獄の果てまでついて行きますから。
後ろ姿に微笑みかけるたしぎだった。


〈完〉