ぬくもり


雨を避けるように、入り込んだ部屋。
濡れた髪を拭いて、上着を脱ぐ。

ベッドに腰掛けているゾロの前に立つと、 両手で頭を撫でて、顔を胸にぎゅっと押し付けるように、抱きしめる。

ふふ・・・

自然に笑みがこぼれ落ちる。
少し、腕を弛めると、ゾロの手がたしぎの腰に廻される。
その感触を確かめるように、節くれだった、ごつごつした指が 背中をすべっていく。

ゾロは、たしぎの白い胸に頬をあて、 心臓の鼓動を全身で感じている。

ゾロの髪の毛をくしゃくしゃにして、頭にキスを浴びせる。
「髪、伸びたんですね。」
「・・・あぁ。」
「お前もな。」

うふふ・・・
「何だよ。」微笑んでばかりいるたしぎに、尋ねる。
「嬉しい。すごく、嬉しいの。」
こうやって、触れあえることが、こんなに幸せなんて。
「あぁ。」
こんなに喜んで身体をあわせたことがあっただろうか。


ゾロはたしぎを引き寄せ、膝に乗せる。

たしぎの細い指が、ゾロの耳から首筋へとすべっていく。
くすぐったそうに、ゾロが首を降り、たしぎを見上げる。
その額に、眉に、瞼に、たしぎの唇が優しく触れる。
大きな左目の傷にも、撫でるように口づけを落とす。
「くすぐってぇ。」
ゾロは目をつぶったまま、たしぎの唇の感触を味わっていた。
そして、ゆっくりと、右目を開けると たしぎの瞳を覗き込むように、顔を動かす。
その視線に応えるように、ゾロをじっと見つめ返す。
首に廻した手が、ぐっとたしぎを引き寄せる。
二人の濡れた唇が重なり合い、背中に廻した指先に力が入る。
何度も何度も確かめるように、舌が絡み合う。

オレは神には祈らねぇが、なにに感謝すればいい。


もう何も、遮るものは見当たらない。
ゆっくりと、そして、優しく、互いに与えあうように、重なりあう。
握った手は、繋がったまま、 離れていた時を、埋め合わせるかのように、 二人の影がひとつになる。



〈完〉


甘い話を書きたくて、一応二年後なんですが。