ぐびぐびと喉を鳴らし、ボトルに直に口をつけて
酒を飲んでいる。
たしぎは、その男の様子を側で眺めていた。
「本当に、美味しそうに飲むんですね。」
勢いよく溢れた酒のしずくが、ゾロの口元から
滴り落ちた。
喉、胸と伝う透明な液体は、男にしてはキメの細やかな
肌を艶めかせている。
上下に動く喉仏と心臓の鼓動と共に
脈打つ胸板に、たしぎはドキリとした。
「こんなに、こぼして・・・」
幼い子を諭すように、たしぎは手にしたハンカチで
ゾロの濡れた胸をそっと押さえた。
胸、首、顎と触れる度に、薄い布越しに
ゾロの身体の熱を感じる。
「もう少し、味わって飲んだらどうですか?」
たしぎの声が聞こえているのか、いないのか、
前を向いたまま、再びボトルに口をつけた。
たしぎは、ゾロの濡れた唇から目が離せない。
溢れるしずくを落とすまいと、気がつけば
舌で、ゾロの唇の滴りを舐めとっていた。
ピクッ。
ゾロの動きが止まった。
「テメェは、そうやって酒を味わうのか?」
たしぎは、自分の行為に自分で驚いて
顔を赤らめた。
指先で自分の唇を隠すように触ると
ふるふると首を振った。
その様子を、ふんとばかりに横目で見ながら、
ゾロは、また口に酒を含んだ。
腕を伸ばして、たしぎの手首をつかむと
おもむろに、自分の唇を重ねる。
たしぎは、口の中に広がる酒の味に
目を白黒させた。
唇を塞がれ、思わず飲み込んだ液体が
喉から胸の辺りを、カッと熱くする。
心臓が早鐘を打ったように激しく打ち、
頭がガンガンする。
強い酒のせいなのか、この男のせいなのか。
遠慮なく口内をかき回すゾロの舌の動きに
吐息を共に、声が漏れる。
「んふっ・・・ん・・・はぁっ・・・」
あふれ出た酒が、たしぎの口元から流れ落ちた。
やっと解放されたたしぎは、放心したように
ゾロを見つめている。
「うん、悪くねぇ。こう、じっくり味わう酒もな。」
ゾロは、たしぎの腰に手をまわし、
ぐっと引き寄せると、耳元で囁いた。
fin.