信じるくらいいいだろう


「なんて、身勝手な人なの!あなたという人はっ! 私が、私が幸せだったなんて、どの面さげて、ほざくんですかっ?!」
馬乗りになって、ゾロの胸ぐらをつかんだたしぎの言葉の激しさに、その怒りを伺い知ることが出来る。

「そんなこと、よく言えますね。」
たしぎの、大きく見開かれた瞳には、伝えたくても伝えられない想いが あふれるくらい詰まっている。

「うるせー!信じるくらいいいだろうがっ!」
負けじと、ゾロが大声を上げる。

たしぎにつかみ掛られたまま、そっぽを向く。
最初の勢いは、姿を消し、独り言のように、うめく。

「おまえは、おまえは、幸せでいるって。 ・・・そう信じなきゃ、やって来られなかった。」

たしぎのつかんだ手が少し緩む。
「じゃあ、そういう事に、しといてあげます・・・」
うつ向いたまま、静かに言う声に、もう怒りは感じられなかった。

「私、ロロノアと離れていたこの二年間、ずっとずっと 幸せに過ごしてました・・・これで、いい・・・ですか?」
ゾロの胸に、顔を埋めるように、しぼり出すような声で伝える。
「・・・うっ、ぐっ・・・」
こらえきれない嗚咽が、漏れる。
ゾロの胸を、じわりと暖かいたしぎの涙が、濡らす。

そのまま、声をあげて、子供のように泣きじゃくるたしぎを そっと抱きしめる。
いつまでも、いつまでも、その大きな手で包みながら。



〈完〉



こんな再会あってもいいかなぁ〜って。