「ひっ!」
たしぎは、いきなりの冷たい刺激に、目を醒ました。
視界に、緑色が広がる。
ゾロが、たしぎの胸に顔を埋めるように、寝返りをうつ。
左耳のピアスが、たしぎの胸に当たったのだった。
身体を重ねていた時には、気づかなかった。
少しまどろんだ間に、外の冷気は、部屋の中まで覆ってしまったようだ。
吐く息が白くなる。
胸元のピアスは、金なのだろう。
すぐに、たしぎ自身の体温で、気にならない程ぬるくなる。
そっと手を伸ばしてゾロの頭をなでる。
「カエルがひっくり返ったような声だなぁ。」
ぼそっと呟く声が聞こえた。
「ロロノア!起きてたんですか?」
驚いてゾロの顔をのぞき込む。
「たしぎに、あっためてもらおうかと思って。」
そう言って、耳を押し付けるように頭を動かす。
「びっくりしましたっ!」
怒ったように言うたしぎに、悪戯っ子のような笑顔を向ける。
その表情に、たしぎは、たまらなく切なくなる。
ぎゅっと頭に伸ばした手に力を込めて、顔を塞ぐように抱きしめる。
たしぎの腕の中で、ゾロが笑うのが分かった。
簡単にたしぎの腕をほどくと、ゾロは改めて自分から抱きしめる。
二人の唇が重なる。
たしぎは、身体の中の鎮まった熱が再び溶けだすのを感じた。
もう、部屋の冷気は気にならない。
*******
冷てぇ。
甲板で寝ていたゾロは、首筋に当たる冷たさで、目が覚めた。
またすぐにまどろみながら、思い出す。
あいつのぬくもり。
おまえを枕に眠りたい。
〈完〉