G-5物語 〜アラクレ〜


「おい!聞いたか?
 今度赴任してきた、新しい準将と少尉。
 少尉の方が、女らしいぞ。」

「いやっほう!美人かな?」
「女なら、なんでもいいぞ!」

「ばか!準将の方は、白猟のスモーカーだぞ!」

「うへっ!」
「でも、ここじゃどんなにグランドラインで
 名をあげた将校だって、一筋縄ではいかないもんだぜ。」

「どんな野郎か、見物だな。」
「あぁ、少尉ちゃんもな。」


ここは、新世界海軍本部G−5。
グランドラインのマリンフォードで
繰り広げられた頂上決戦、その影響で
新たな海軍本部となった。

ただ、元の本部に近いというだけで、
マリンフォードとは雲泥の差。

いわゆる、やっかい者と呼ばれる海兵達の
最終赴任地だった。



****

「今日から、お前らの部隊の指揮をとるスモーカーだ。」

「たしぎ少尉です。」


にやにやと薄笑いを浮かべる海兵達。

「おらっ!とっとと、出航準備だ!」

スモーカの激で、空気がピリっと変わる。
バラバラと走りだして、各自の持ち場についた。


囁く声が風に乗って聞こえる。

「全く動じてなぇな、あの上官。」

「あぁ、まったく喰えねぇな。」

「でもよぉ、オレら見て
 何も言わずに命令した奴なんていなかったよな。」

「確かに・・・だいたい説教から入るもんな。
 『なんだ、そのたらしない格好は!たるんどる!』ってな。」

おのおのに、巡る想い。
赴任する上司はいつも、部隊の奴らを見下す。
おかげで、隊の結束は強まった。
そのせいか、余計、扱いにく部隊だと言われるようになった。


「あぁ・・・ま、準将も裸にジャケットだしな・・・
 無頓着なだけかもしんねぇぞ。」

「それにしても、副官のかわいこちゃんの方見たか?
 口をあんぐり開けて、俺達見てたぜ。」

「うひゃひゃっ!こんななりした奴らが海兵ですか?って
 顔に書いてあったな。」

「こりゃ、からかい甲斐がありそうだな。」

「でも、かわいかったなぁ〜〜。」

「そうか?キツそうな感じだったぞ。」

それぞれの想いを乗せて、船は新世界の海へと
走り出した。



*****


一方、ここは船長室。
スモーカーの側で、たたずむのはたしぎ。

「大丈夫なんでしょうか?操舵を彼らにまかせっきりで。」

「まぁ、どれだけやれるか、様子見だ。」

「それにしても、あの格好は、なんとかなりませんでしょうか?
 G−5の文字が入ってなければ、誰も海軍だなんて
 分かりません!海賊に間違われてもおかしくないですよ!」

ぎゅっと手袋ごと拳を握りしめる。

「見てくれだけじゃ、わかんねぇもんだって
 あんだろ〜よ、たしぎ。」

足を机に投げ出して、椅子にもたれ掛かるように座るスモーカーは
いつものように葉巻をくゆらせている。

まぁ、スモーカーさんを見ていれば
多少のことでは、動じなくなりましたけど・・・

その姿を眺めながら、たしぎは思う。


「これからは、もっとテメェの判断だけで
 動かなきゃなんねぇ時が嫌っていう程あるぞ。
 覚悟しとけ。」

「・・・はい。」

窓から見える、荒れた海がたしぎの心の内を
表しているようだった。

とにかく、彼らの事をもっとよく知らなければ。

「船内の様子を見てきます。」

たしぎは、スモーカーにそう告げると
まるで、適地に行くような面持ちで、船長室を後にした。



〈続〉