「おい!聞いたか?
今度赴任してきた、新しい準将と少尉。
少尉の方が、女らしいぞ。」
「いやっほう!美人かな?」
「女なら、なんでもいいぞ!」
「ばか!準将の方は、白猟のスモーカーだぞ!」
「うへっ!」
「でも、ここじゃどんなにグランドラインで
名をあげた将校だって、一筋縄ではいかないもんだぜ。」
「どんな野郎か、見物だな。」
「あぁ、少尉ちゃんもな。」
ここは、新世界海軍本部G−5。
グランドラインのマリンフォードで
繰り広げられた頂上決戦、その影響で
新たな海軍本部となった。
ただ、元の本部に近いというだけで、
マリンフォードとは雲泥の差。
いわゆる、やっかい者と呼ばれる海兵達の
最終赴任地だった。
****
「今日から、お前らの部隊の指揮をとるスモーカーだ。」
「たしぎ少尉です。」
にやにやと薄笑いを浮かべる海兵達。
「おらっ!とっとと、出航準備だ!」
スモーカの激で、空気がピリっと変わる。
バラバラと走りだして、各自の持ち場についた。
囁く声が風に乗って聞こえる。
「全く動じてなぇな、あの上官。」
「あぁ、まったく喰えねぇな。」
「でもよぉ、オレら見て
何も言わずに命令した奴なんていなかったよな。」
「確かに・・・だいたい説教から入るもんな。
『なんだ、そのたらしない格好は!たるんどる!』ってな。」
おのおのに、巡る想い。
赴任する上司はいつも、部隊の奴らを見下す。
おかげで、隊の結束は強まった。
そのせいか、余計、扱いにく部隊だと言われるようになった。
「あぁ・・・ま、準将も裸にジャケットだしな・・・
無頓着なだけかもしんねぇぞ。」
「それにしても、副官のかわいこちゃんの方見たか?
口をあんぐり開けて、俺達見てたぜ。」
「うひゃひゃっ!こんななりした奴らが海兵ですか?って
顔に書いてあったな。」
「こりゃ、からかい甲斐がありそうだな。」
「でも、かわいかったなぁ〜〜。」
「そうか?キツそうな感じだったぞ。」
それぞれの想いを乗せて、船は新世界の海へと
走り出した。
*****
一方、ここは船長室。
スモーカーの側で、たたずむのはたしぎ。
「大丈夫なんでしょうか?操舵を彼らにまかせっきりで。」
「まぁ、どれだけやれるか、様子見だ。」
「それにしても、あの格好は、なんとかなりませんでしょうか?
G−5の文字が入ってなければ、誰も海軍だなんて
分かりません!海賊に間違われてもおかしくないですよ!」
ぎゅっと手袋ごと拳を握りしめる。
「見てくれだけじゃ、わかんねぇもんだって
あんだろ〜よ、たしぎ。」
足を机に投げ出して、椅子にもたれ掛かるように座るスモーカーは
いつものように葉巻をくゆらせている。
まぁ、スモーカーさんを見ていれば
多少のことでは、動じなくなりましたけど・・・
その姿を眺めながら、たしぎは思う。
「これからは、もっとテメェの判断だけで
動かなきゃなんねぇ時が嫌っていう程あるぞ。
覚悟しとけ。」
「・・・はい。」
窓から見える、荒れた海がたしぎの心の内を
表しているようだった。
とにかく、彼らの事をもっとよく知らなければ。
「船内の様子を見てきます。」
たしぎは、スモーカーにそう告げると
まるで、適地に行くような面持ちで、船長室を後にした。
〈続〉