宴会島。
正式な名前を覚えている者は少ない。
誰もがぞう呼んでいた。
世界中から、宴会を目的に人が集まってくる。
年末、年始、お盆にクリスマス。
季節の節目を問わず、年がら年中賑わっていた。
海軍本部G-5の面々も、その中にいた。
「ねぇ、スモや〜ん!いいでしょう?」
「そうそう、ここは宴会島なんだから!」
「久しぶりに、会ったんだから、ここは固いことなしってことで。テヘッ。」
部下たちに説得され、不承不承に頷いたスモーカーは
「お前ら、勝手にやってろ。オレは後ろのほうで一人でやるからな。」
と言い残すと、会場の奥にある個室に引っ込んでいった。
「黒足のアニキ!スモやんの了承が取れました!」
G-5の海兵たちが、喜んで報告しに行った先には、麦わら海賊団のコック、サンジがいた。
「お前ら図々しいにも程がある!」
「だって、アニキの作った料理がまた食べられるなんて!」
「こんなチャンス、めったにありませんぜ!」
「ほんと、俺たちゃラッキーだよな。宴会島で麦わら達と一緒になるなんて!」
「これも何かのご縁ってことで、アニキよろしくお願いします!」
G-5達が、サンジに向かってビシッと敬礼をする。
「ったく、しょうがねぇな。」
そう言いながら、大鍋を振るサンジは
それほど嫌そうな顔はしていなかった。
「あ、そうそう!たしぎちゃんも来るんでしょ!そこ大事だから!」
「もっちろんです!アニキ!わがG-5のマドンナ、たしぎちゃんは
ちゃ〜〜んとお連れします。」
「了解。何を作ってあげようかな〜!?ふふん♪」
ご機嫌に、次の食材を手に取ると、鮮やかな手さばきで
料理に取りかかる。
「さ、俺たちゃ、会場準備をしようぜ。」
「おう!」
楽しそうに、会場の飾りつけに向かった。
******
「へぇ、ケムリン達もこの島に来てたのか。」
ルフィは、事情を説明に来たG-5の海兵にむかって、
一緒の宴会に快諾の返事をした。
「よし、いいぞ!人数が多いほうが、宴は楽しいもんな。」
「え〜!大丈夫なのかよ、海軍と一緒で。」
ウソップが反対の声をあげた。
それでも、さほど心配な様子でもなく、
出し物のマジックの準備を始めた。
「まぁ、観客は多いほうがいいからな。
ふふふ、俺様のマジックで、G-5のやつらアッと驚くぜ。」
「そうだな、楽しみだ!」
助手を務めるチョッパーが、ウソップを手伝いながら
目をキラキラさせた。
「音楽に垣根は、ありませんからね〜。」
ブルックは、ヴァイオリンの手入れをしながら
鼻歌を歌う。
「たしぎも来るわよね。」
「でしょうね。」
洋服をとっかえ引っ変えして、選んでいるナミに
傍で読みかけのの本をパタンと閉じると、ロビンが答えた。
「さあ、みんな行くぞ〜!宴だぁああ!」
ルフィを先頭に、麦わらの一味は、会場へと向かった。
*****
「すげえよ、やっぱり世界中の食材が集まってる。
ナミさ〜ん!ロビンちゃ〜〜ん!待ってたよ〜!」
先に会場入りして、料理を作っていたサンジが迎える。
「麦わらの〜!早く始めようぜ!」
G-5達も、一味の到着を待ちかねていた。
「なんだ?オレぁ聞いてねえぞ、海軍が一緒だなんて。」
後ろから来たゾロが、あくびをしながら、文句を言う。
「アンタ、寝てたでしょ。」
ナミが悪戯っぽく笑う。
ちぇ。
「しょうがねぇな、めいっぱい酒持って来させろ。」
そんな中、始まった宴は、予想以上に盛り上がり、海賊と海軍が
入り乱れての大騒ぎとだった。
******
「たしぎ!」
ひときわ明るい声で呼びかけたのは麦わらの一味ナミだった。
「どう?元気にしてた?」
「ええ、ナミも元気そう。相変わらず噂は聞くけど。」
「まぁね、船長がアレだから。」
ナミのいうアレこと麦わらのルフィは、さっきから
すごい勢いで料理をたいらげ、大声で笑っている。
ほんとに、いつ見ても、騒がしい。
たしぎは、その様子を見てクスっと笑う。
ナミの心配は絶えなさそうだ。
「あ、モチャたちの写真見ます?
海軍の療養施設で撮ったものです。」
「え、ほんと?見る見る!」
たしぎは鞄から写真を取り出すと、ナミに差し出した。
「みんな、元気そう。」
ロビンも隣から覗き込む。
ふと、会場の奥の緑色の髪の男を視界にとらえる。
宴が始まってから、ずっとその場にいる。
G-5の部下達が入れ替わり寄ってきては
酒を酌み交わしているようだ。
バカ騒ぎをするような男ではないと思うが、
今日は、なんだか不機嫌だ。
もう少し楽しそうな顔をしたらいいのに。
たしぎは、その原因が自分にあるとは知らずにいた。
〈続〉