突然、大声のアナウンスが会場に響き渡る。
「やってまいりました!本日のメインイベント!
王様ゲームの始まりだぁあああ!!!」
サンジの張り切った宣言に、
うお〜〜〜!と地鳴りのように男達の声が響く。
なに?なにが起こるの??
たしぎがキョロキョロあたりを見回しているうちに、
クジが回ってきた。
「大佐ちゃん!一本引いて!」
言われるがまま、棒状のくじを引くと、先っぽに番号が書いてかった。
「これ、どうするんですか?」
「えへへ、お楽しみ!」
へえ〜と、グラスを傾ける。
さっきから、会場の空調のせいか、喉が渇いてしまう。
アルコールがほとんど入っていない軽いカクテルを
飲んでいるが、だいぶ酔いがまわっている感じがする。
ナミやロビンは、さっきか強い酒を何杯も飲んでいる様子だが、
全く酔った素振りは見えない。
二人のハイペースにつられないようにしないと。
そう思いながらも、美味しいサンジの料理と楽しい会話で
ふわふわして、気持ちがいい。
******
今日はなんだか酔える気がしねぇ。
宴会が始まってから、ずっと動かずに飲んでいたゾロは
早々に、旨い酒をあきらめた。
その原因はわかっている。
あのメガネ女のせいだ。
さっきから入れ替わり立ち替わり海兵どもが
たしぎの周りに来ては酒を注いだり、料理を持ってきたりと
めまぐるしい。
一緒にいるナミやロビンは、そういう男どもの扱いには
慣れているから心配はないが、アイツは、勧めらるままに
クラスを空けている。
よくあんなんで、大佐なんてやってられんな。
様子を見れば、何か一言、言いたくなる自分に
なんだか、腹が立つ。
別に関係ねぇけどよ。
と思いながらも視線は、たしぎから外せない。
それもまた、腹が立つ。
海兵たちがせっせと運んでくる酒を
ひたすら飲み続けていた。
ウソップとチョッパーのマジック、ブルックの演奏が続く。
海兵たちの女装大会が始まり、たしぎもナミもロビンと一緒に大笑いしている。
いい気なもんだ。
不機嫌な自分を持て余す中、
サンジの大声が響いた。
「さぁ!レディのみなさ〜〜ん!心の準備はよろしいですか?
王様ゲームが始まるよ〜〜〜!!!」
「いよっ!待ってました!黒足のアニキ〜〜〜〜!!!」
海兵たちの喝采の中、サンジがステージ中央に進み出る。
「みんな!さっき引いたクジを手に持て〜〜〜!!いいか〜〜!?」
おお〜〜〜!とも、うお〜〜!とも聞こえる
男どもの地声が響く。
「まずは、王様!せ〜〜の!」
サンジの掛け声にみんながいっせいに声を張り上げる。
「王様、だ〜〜〜れだ!?」
「俺だ〜〜〜〜!!!!」
ひときわ大きい声でガッツポーズをしながら返事をしたのは、
他でもないステージ中央のサンジだった。
「ええ〜〜〜!!!」
賛否両論のざわめきと共に、ゲームがスタートする。
「いいか〜〜!まずは、ポッキーゲームのメンバーだ!
二人組になって、ポッキーを両側からかじって、一番短く食べたものの優勝だ!」
「うお〜〜〜!!!」
「まずは、8番!そして〜27番!」
立ち上がったのは、ブルックとG-5の海兵の一人だった。
「ギャ〜〜〜!!!!こえ〜〜よ〜〜!!!」
「わ、わたしの方こそ!お手柔らかに。」
ブルックのガチガチ鳴る歯に、海兵がひきつりながらポッキーを咥える姿を
みんな大笑いで眺めた。
「ふふふ、じゃあどんどん行くぞ〜!」
「次は、2番と〜〜〜、16番!」
「あら、私のようね。」
と立ち上がったのは、ロビン。
相手は誰だ〜〜〜〜!!!!
とざわつく中、立ち上がったのは、チョッパー。
「うへへへ。」
ロビンはチョッパーを膝に抱くと
ポッキーを口にくわえる。
「いい?」
ぽけっとされるがままにロビンを眺めていたチョッパーの青い鼻先に、
ロビンの鼻がくっついた所で、チョッパーが笑いだし、咥えたポッキーを離した。
「く、くすぐってぇ!ロビン!」
「ふふふ。」
周りからは、なんてもったいないんだ!と溜め息が漏れた。
「いいぞ!いいぞ!我々にもチャンスはあるぞ〜!!」
「おお〜〜〜!」
「なになに?王様にも命令をひとつすることだと!!
いつからそんなルールになったんだ!?
しかたねえ、じゃ、行くぞ!俺とポッキーゲームするのは!
・・・・よし、来いっ!73番!だ〜〜〜!!」
「ええ!俺?」
サンジの相手として立ち上がったのは、さっき女装コンテストに出ていた
やけに体つきがしっかりした海兵だった。
「いやぁ、黒足のアニキぃ。」
照れながらも、その気になっている海兵に、サンジは後ずさる。
「う、嘘だろ。オレはG-5に探らせて、ナミさんの番号を言ったはずなのに!」
「へへ、そんな照れなくたっていいっすよ。」
恥ずかしそうに近づく海兵に、サンジの腕はしっかりと捕まえられていた。
「だ、だれか助けて!ギャ〜〜〜〜!!!!」
サンジの断末魔の叫びに、たしぎは、涙が出るほど笑い転げた。
「ちきしょう・・・こうなったら、もう誰でもいい!
人数的に、確率は男どおしだ!思い知れ!・・・2番と16番だ〜〜〜!!!!」
「あ、あたしだっ!」
まっさきに、その場に立ち上がったのは、たしぎだった。
ええ〜〜〜!!!
会場中がざわめく。
「相手は誰だ?」
「もう、さっきみたいにチョッパーという訳にはいかないぞ!」
「あぁ、なんで俺じゃねぇんだ!」
あちこちで、落胆の声が聞こえるなか、
「ほら、旦那ですよ!さ、立って!」
と海兵達に促されて、ゆらりと立ち上がったのは
奥でひっそりと飲んでいたロロノア・ゾロだった。
「そ、そんなぁ。」
サンジが落胆する中、不機嫌さは頂点を極めた様子のゾロは
腕を組みながら、ゆっくりとステージへと進んでいく。
「ほらっ、たしぎも!」
ナミに促されて、たしぎも戸惑いながらステージに向かう。
たしぎの後ろ姿を見ながら、そっと目配せをするロビンとナミだった。
〈続〉