グランドラインのとある島。
そこは何やら物騒で、街のあちこちで銃声や怒号が
聞こえるような所だった。
ログがたまるのに一週間かかる。
麦わらの一味は、
ひと通りの物を揃えると、上陸せずに、
船上で過ごすことにした。
三日目のことだった。チョッパーが、必要な薬草を買い忘れたと
言って、街にもう一度行くことになった。
チョッパー一人では、心もとなく、ゾロも一緒について行くことにした。
船は港を避けて、離れた海岸に停めたので、
街には、山を越えて行かなければならなかった。
街で薬草を探していると、港の方て一戦あったようで、
火薬の臭いがし、あちこちで大砲の音がし始める。
バラバラと走り回るのは、海兵と賊だけだった。
街の人々は、早々に家の中に引っ込んでしまっていた。
チョッパーが店から出てきた。
「ゾロ、ありがとう。ようやく全部揃った。
何だか、ここも危険だな。
早く船に戻ろう。」
キョロキョロとあたりを見回して、ゾロを急かす。
待っている間に、ゾロは、酒を数本手に入れていた。
人目に付かないように、細い林の道を通る。
チョッパーが一緒なので、道に迷う心配はない。
「ゾロ、こっちだ。」
臭いを嗅きながら、チョッパーが先を歩く。
急に、近くの茂みからガサガサッと音がする。
「!」ビクッとして立ち止まる。
「な、なんか居るぞ。」
微かに人の気配がする。
鼻をヒクヒクさせて、呟く。
「血の臭いだ。
・・・なんか、嗅いだことあるぞ。この臭い。」
ゾロが茂みをかき分けて、進む。
不意に、刀が足元を掠めるように、振り抜かれる。
待ち伏せをして、狙ったのだろう。
しかし、その勢いは無く、容易に避けることが出来た。
その刀の主は、たしぎだった。
座り込んで時雨を構えてはいるが、
目は焦点があっておらず、息が荒い。
「何者!?・・・わ、たしは、海軍の・・・」
いい終わらないうちに、グラリと身体が揺れ、地面に手をつく。
「おい、どうしたんだ。」
その声に、反応して顔をあげる。
「・・・ロ、ロ・・ノア、どうして、こ・・こに・・・」
と言うと、そのまま、気を失ってしまった。
「しっかりしろ。」
かかえおこしたゾロは、手のヌルっとした感触に驚いた。
たしぎの左肩から背中にかけて斬られていて、
そこから、シャツを濡らすほどの血が流れていた。
それを見たチョッパーが駆け寄ってくる。
「切られたのか?すごい、出血だ。
はやく手当しないと。」
「船に運ぶか?」
「いや、ここから、山を越えなきゃいかないんだ。
これ以上動かさないほうがいい。ちょっと、待ってろ。」
「傷口を、押さえて止血しててくれ。」
チョッパーがガサガサと、林の奥に入っていく。
信じられなかった。
なぜ、たしぎがこんな所で倒れているのか。
しかも、背中に傷を負っている。
敵にやられたのか?
******
たしぎは、山賊を追っていた。
頭領と思われる男が、戦闘の中、一人走り去るのが見えた。
手下を置き去りにして逃げるとは、卑怯な奴。
許せない。
一人、走りだしていた。
男が、林の中へ逃げ込む。
「待ちなさい!」
傷を負い、足元も覚束無かった。
すぐに追いつける。
しかし、近づいた所で急に相手の気配を見失ってしまった。
どこだ?隠れたか?
追ってきたたしぎの呼吸も荒い。
呼吸を整え、気配を探さないと。
その瞬間だった。いきなり後ろから襲いかかられた。
背中に焼けるような痛みが走る。
振り向きざまに、時雨を思い切り振りぬく。
手応えがあった。
膝をつきながらも、男の方に向き直ると、
男は、ナイフを落とし、手を押さえていた。
「うわ〜〜っ!」と叫び、ナイフを拾うことをあきらめ、
そのまま逃げていった。
追わなければ、と思ったが、身体が動かない。
そのまま、膝をついたまま、時雨を握り締める。
不意に人の気配がして、凍りつく。
戻って来たのか?
このままじゃ、殺られる。
なんとか、しなきゃ。
目が霞む。
間合いに入った瞬間、足元を狙うしかない。
目の前の茂みが揺れた瞬間、思い切り時雨を振り抜いた。
外した!
身体が悲鳴をあげる。
「おい。」
忘れようもないこの声。
緑色の髪と金色のピアスを認めて
記憶が途切れた。
<続>