「ようこそ、噂は聞いてるよ。
スモーカー准将、よろしくな。」
目の前に立つのは、G-5基地長のヴェルゴ中将。
サングラスの奥の表情は、たしぎからは読めない。
「この『G-5』の奴らは粗雑で頭はよくないが
つき合って見れば世間が言う程、悪い奴らじゃない。
その内、かわいい部下だと思えるハズだ。」
にこやかに語る口調はとても呑気だ。
「よろしく。」
「よろしくお願いします。ヴェルゴ中将。」
スモーカーの前で、たしぎがお辞儀をする。
「・・・」
頬にだんごをつけたまま、ヴェルゴがたしぎを見る。
「たしぎです。階級は少尉です。」
「あぁ、スモーカー中将の右腕の・・・。
こんな可愛らしい部下を連れて、うらやましいものだ。」
「はぁ。」
曖昧に笑ってみせる。
まぁ、いつもの事だ。
「荷物を置いたら、基地を見て回ってくる。
部隊の船は?」
横から、スモーカーが割って入る。
「・・・ああ、1番ドッグだ。」
「了解。」
「し、失礼します!」
慌てて、スモーカーの後を追った。
*****
ドサッ!
船に乗るまでの基地の部屋。
ベッドの上に、スーツケースを置く。
どうせ、すぐに船に乗るから、中身は出さないでおこう。
ベッドに腰掛け、外を見る。
窓から見える空は、グランドラインと変わらないようだ。
でも、その下の海は。
何が待ち構えるのだろう。
この新世界。
期待と不安と少しの焦り。
また、始めから築いていかなければ。
新しい部下達は、どんな感じなんだろう。
くくくと、思い出して笑う。
「そのリュックの中身は、なんなんですか?」
マリンフォードを出航するとき、スモーカーの
リュックがあまりにも大きくて、思わず聞いてしまった。
「あ?・・・葉巻だ。あっちにゃ、あるかどうかわかんねだろ。」
「ふふふ、そんなにたくさん!スモーカーさんったら!」
しまいには、声をあげて笑っていた。
そっか、グランドラインには、もう戻らないと・・・
はたと気づく。スモーカーの覚悟。
私は・・・
この時雨と共に進むだけ。
まるで、触れていれば安心するかのように
手袋ごしに、その柄の感触を確かめる。
何が待ち受けているというのだろう・・・
そして、その先に・・・
たしぎはゆっくりと立ち上がると
窓辺から広がる海原をじっと見つめた。
〈続〉