「大佐ちゃん!おかえりなさい!」
「もう平気なのか?無理してねえだろうな!」
「わ〜〜〜、会いたかったぜ〜〜〜!!!」
その頃、たしぎも、新世界G-5本部であつい出迎えを受けていた。
「みんな、心配かけました。もう大丈夫です。」
食堂に集まった部下達を前に、たしぎは帰還の報告をする。
なにやら、お帰りパーティだろうか、
食堂は色とりどりの紙テープで
飾り付けされている。
「すごいですね。こんなにしてもらって、何だか悪いです。」
恐縮くるたしぎに、G-5達は笑い出す。
「何、言ってんの!今日はハロウィンだろ。」
「はろうぃん?」
キョトンとしているたしぎにG-5達が得意げに説明をする。
「子供たちが、魔女やモンスターに仮装して、街中を練り歩くんだ。
Trick or Treatって。」
「お菓子をくれないと、悪戯するぞって。」
「へぇ。」
「その日は、みんなお菓子を用意して、やってきた子供たちに
くばるんだ。」
「俺たちG-5は、毎年仮装して、船内で楽しんでるって訳。」
「ほらっ、俺なんかゾンビだぞ。上手く化けただろ。」
「俺なんか、ミイラ男だ!」
たしぎにむかって、皆自慢の仮装を見せる。
「あは、仮装だったんですね。なんか、みんな、凄みが増したなって思ってました。」
「なんだよ、そりゃ!」
「ひでぇよ、大佐ちゃん!」
「でも、楽しいですね。」
「だろ!大佐ちゃんも、やってみればいい。ほら、ネコみみ!」
差し出されたネコの耳がついたカチューシャを
かぶってみる。
「おお〜〜〜!」
「かわいい〜〜〜!」
どよめきの声があがる!
そこに料理が運ばれてくる。
「酒だ!酒!」
一気に宴会が盛り上がった。
酔いがまわってきたとこで、G-5達がたしぎのまわりに集る。
「大佐ちゃん!Trick or Treat!」
そう言いながら、いっせいに手を差し出した。
「お菓子をくれないと、悪戯するぞ〜〜!」
にやにや笑っている。
「ご、ごめんなさい!私、お菓子の用意してなくて・・・」
慌てふためくだろうたしぎを、からかったのだ。
ふと、ひらめいたようにたしぎが、みんなを見渡す。
「じゃあ、いたずらしてもいいですっ!」
静まり返る食堂。
「私、少しの悪戯ぐらいなら、びっくりしませんから!」
どさっ。がたっ。
床や椅子に座りこむG-5達が目に入る。
「衛生班!急激な血圧上昇により鼻粘膜下の毛細血管が破損し、
血液が漏出した者多数!至急、救急箱を持って来い!」
バタバタを走り出す衛生兵の姿が見えた。
え?
何が起こったのか、たしぎは把握できなかった。
「みんな、大丈夫ですか?」
おろおろしているところに、スモーカーが現れた。
「ずいぶん騒がしいじゃねぇか、お前ら・・・なんだ?このスプラッタは!?」
仮装で血のりをつけている者もいて、
食堂内はさながら、ホラー映画の一場面のようだった。
「ハロウィンパーティです。スモやん!」
「面白ぇ、趣味だな。」
「大佐ちゃんの爆弾発言で、こうなった有様です!
危険だよ、あの子は!
まったくわかってねぇ!」
「はぁ?」
訳がわからず、たしぎを見れば、ネコ耳をつけたまま、キョトンとしている。
「あ、スモーカーさん!」
上官の姿を見つけると、駆け寄ってくる。
「スモーカーさん、知ってました?ハロウィンなんて!
お菓子をあげないと、悪戯されちゃうんですよ〜!」
「Trick or Treat !」そう言いながら、手を差し出すたしぎ。
「スモーカーさんも、お菓子もってないですよね〜。ふふふ、
そういう人には、いたずらしてもいいんですよ〜〜!」
なんだか、ずいぶん歪曲して解釈してる様だ。
「あ、でも、私もお菓子もってないから、いたずらされちゃうんですね。
ん〜〜、スモーカーさん!やさしくして下さいね!」
首をかしげて、無邪気に笑うたしぎに何の意図もなかった。
ポロッ。
スモーカーの葉巻が床に落ちる。
隣で、部下がまた一人、鼻血を出して倒れた。
「たしぎぃ、お前・・・・」
「だろ?スモやん!大佐ちゃんは危険すぎる!」
こいつは、自分の目の届く範囲に置いておかないと、
とんでもない事になるぞと
改めて、心に刻んだスモーカーだった。
fin.