3 〜ピアス〜
「なぁ、手紙、送ってくんねぇか。」
ナミに、そう頼んだのは、たしぎからの手紙を受け取ってから、一週間ほど後のことだった。
「えっ!どうしたの?ゾロ。」
「グランドラインからじゃ、イーストブルーには届かないか?」
いつになく、真面目な顔で聞いてくるゾロに、ナミは驚きながらも、丁寧に答える。
「時間はかかるけど、届くわよ。だいたい、そうね、二ヶ月ぐらいかかるかしら。」
「時間はかかっても、かまわねぇ。届くんだな。」
「え、ええ。大丈夫よ。」
「封筒、くんねぇか。送りたいものがある。」
ナミから、封筒を貰うと、部屋へと戻っていった。
誰もいない男部屋に戻ったゾロは、しばらく目を瞑って座っていたが、
立ち上がると、和道一文字を、すっと抜いた。
しばらくして、ゾロは、ナミのいるデッキに小さな紙切れと一緒に封筒を持ってきた。
テーブルに封筒を置くと、コトッと音がした。
少し重みのある物のようだ。
「この場所へ送ってくれ。」
ナミは、紙片を見ながら、テキパキと質問していく。
「ふうん、これ、あんたの師匠?」
「ああ。」
「道場宛でいいのね。」
「ん、あぁ。」
歯切れの悪いゾロを、不思議に思いながらも、宛先を書いていく。
「これ、何?」
「・・・ん、あぁ。送れるか?」
心配そうに聞くゾロに、「大事なものなの?」と尋ねる。
ゾロは無言で頷いた。
「そうね、厳重に梱包して、水濡れ防止をして。」
ナミは手際良く、封筒を厳重に梱包していく。
「さ、これで大丈夫よ。・・・差出し人はどうする?名前なんて、書けないわよ。」
「わかってる。書かなくていい。」
「ふうん、相手がゾロからだって、解かるのね。」
「・・・ああ・・・受け取ればな。」
「じゃあ、これでオーケィ!切手代と手数料、貸にしとくわね。」
「恩にきる、ナミ。」
「あんたらしくないわよ。何があったか知らないけど、元気だしなさいよっ!」
神妙な様子のゾロの肩を、バンとたたいて、元気づけようとして、ハッとする。
「ゾ、ゾロ、あんたピアス一個どうしたの?」
「あ、あぁ。落としたみたいだ・・・」
「そんな。」血の滲んだ傷を見て、ナミは息を飲む。しかし、それ以上は聞こうとはしない。
「明日あたりニュース・クーが届くから、その時、お金と手紙を渡して、
送ってもらうから、大丈夫よ。きっと、ちゃんと届くわよ。」
安心させるように、ゾロに告げると、笑顔をむける。
「ありがとな。」深くは問わなかったナミに、安堵したように、いつもの見張り台へと戻っていった。
チョッパーだけは、耳の傷を診せろと、傷薬を塗ったりしたが、他のクルーは誰一人、
ゾロの足りないピアスの理由を、訊ねたりはしなかった。
〈続〉